【内科】高血圧

高血圧とは?

血圧は血液が流れる際に血管の内側にかかる圧力のことを指します。血圧については、上と下の2つがあり、上は心臓が収縮して血液を全身へ送り出す際の「収縮期血圧(最高血圧)」、下は心臓が拡張した際の「拡張期血圧(最低血圧)」で表します。

一般的に収縮期血圧が140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上の方が高血圧と診断されます。

ご自宅で測定する場合はそれよりも5mmHg(135/85mmHg)低い数値が高血圧であるとされています。日本では約4,300万人の高血圧患者がいると推定されており、約3人に1人が高血圧と言われています。

 

【国際的な基準であるWHO/ISH分類】

・最適血圧:120/80mmHg未満

・高血圧前症:120-139/80-89mmHg

・高血圧:140/90mmHg以上

 

ただし血圧は一日中変動しておりますので、運動後に血圧が高くても高血圧の心配をする必要はありません。血圧が何度も計測して120/80mmHg以上の方は、一度、医療機関に相談しておくことをおすすめします。

高血圧の症状について

  • 血圧が高い
  • 頭痛
  • 肩こり
  • 耳鳴り
  • めまい
  • 吐き気や嘔吐
  • 全身の痙攣など

高血圧の主な症状については、上記の通りです。しかし、ほとんどは無症状ですので、医療機関を受診せず長時間放置した結果、万病の元である動脈硬化が進んでしまう方も少なくありません。

その結果として無症状にも関わらず突然、脳卒中(脳梗塞・脳出血)や心疾患(狭心症・心筋梗塞・心不全)などの生命に関わるような事態を招く場合もあります。つきましては自覚症状がなくとも早期診断のために、40歳を過ぎた方は家庭や病院での定期的な血圧測定をおすすめします。

2つの高血圧「本態性高血圧」と「二次性高血圧」について

高血圧には、明確な原因が分からない「本態性高血圧」と、他の病気やお薬の副作用が原因で起こる「二次性高血圧」という2つの種類に分類することができます。高血圧の種類によって治療方針が変わってきます。

本態性高血圧

本態性高血圧は日本の高血圧患者の8〜9割を占めています。原因についてははっきりしていませんが、体質をはじめ、塩分やアルコールの摂取過多、肥満、運動不足、ストレスや喫煙などの要因が関係していると考えられます。

二次性高血圧

日本の高血圧患者の1割以上は二次性高血圧に分類されます。二次性高血圧は特に若年層の割合が高く、若年層の高血圧患者の5割以上が二次性高血圧と考えられています。ホルモン分泌の異常や腎臓疾患をはじめ、お薬の副作用が原因で起こります。二次性高血圧については、一般的な降圧治療では改善できない場合も稀にありますが、根本的な原因を解消することによって血圧を正常にすることができます。

高血圧によって引き起こされる脳・心臓の疾患

高血圧の状態が長時間続くと、血管がダメージを受けて硬く、脆くなり、動脈硬化をはじめ、下記のような脳や心臓などの疾患を引き起こす可能性があります。

脳出血

高血圧によって脳の細動脈が脆くなるため、大きな圧力がかかることによって、血管が破裂して脳内で出血が起こります。

脳梗塞

高血圧によって動脈硬化が起こると、脳内の血管が狭くなってしまいます。その狭くなってしまった部分に血栓(血のかたまり)が詰まると、脳内に血液が送られなくなるため、脳が壊死してしまいます。

狭心症

心臓を取り巻く血管・冠動脈が狭まって血液が流れにくくなり、心筋が血液不足になって一時的に酸素不足になってしまう状態です。胸を締め付けるような痛みや圧迫感を伴います。

心筋梗塞

冠動脈が血栓や沈殿物などによって塞がれ、心臓に血液が送られなくなるため、心筋が壊死します。強い胸の痛み、呼吸困難、嘔吐、冷や汗など、様々な症状を伴います。

その他の疾患

高血圧は、腎臓にも影響を及ぼします。腎臓は小さな動脈のかたまりのような臓器で、血液を濾過して尿を作ります。高血圧によって動脈硬化が進むと腎硬化症、さらに進むと腎機能が著しく低下する腎不全になります。そうすると尿を作る働きが衰えて体内に老廃物が溜まり、人工透析をしないと生命が維持できなくなります。そのほか、大動脈が裂ける大動脈解離などのリスクも高くなります。

高血圧の治療について

高血圧の治療は「生活習慣の改善」と「薬物療法」によって、降圧目標値を目指します。低・中リスクの場合は、まず生活習慣の改善を行います。その1ヶ月後に降圧が十分でない場合は、生活習慣の改善をさらに強化しながら、降圧薬の服用を開始します。高リスクの場合は、すぐに薬物療法を実施し、降圧に努めます。

高血圧治療〈生活習慣の改善〉

病気がなく、健康診断にて高血圧を指摘された場合や血圧が140/90mmHgを少し超えた場合には、生活習慣を改善するだけで十分に降圧できる可能性があります。生活習慣については、下記の6つに注意して取り組みましょう。

塩分の摂取を控えましょう

日本の食生活は塩分が多いため、高血圧の方はできるだけ塩分の摂取を控えましょう。日本高血圧学会では、一日の塩分の摂取量を6g以内にするように推奨されています。

ストレスを溜めない・ストレスを発散する

ストレスを感じたり、緊張状態が続くとホルモンバランスが乱れ、血管が収縮するため、心拍数が増えて血圧が高くなります。読書や運動など、何でも良いので自分なりの方法でストレスを発散しましょう。

アルコールの摂取を控える

アルコールを大量に摂取すると、血圧が上昇するだけでなく、降圧薬の効き目が悪くなってしまいます。また、塩分の多いお酒のつまみは、さらに血圧を上昇させる原因になるため、お酒の飲み過ぎに注意しましょう。

禁煙・減煙しましょう

タバコには有害物質が多く含まれており、体に取り込むことによって血圧を上昇させたり、動脈硬化のリスクを高めます。その他にも心筋梗塞や脳梗塞などのリスクも高めてしまうため、高血圧の方は禁煙・減煙しましょう。

適度な運動をする

血圧を下げるためには、有酸素運動や筋力運動が効果的です。激しい運動はケガの危険や長続きしない場合があるため、ウォーキングなどの負荷の軽いものを中心に適度な運動を心がけましょう。

睡眠をしっかり取りましょう

寝不足になると、交感神経が強く働くため、血圧を上昇させてしまいます。十分な睡眠を取り、規則正しい生活を心掛けましょう。

 

高血圧で用いるお薬について

高血圧の治療で実施する薬物療法では、主に下記のようなお薬を用いて降圧を目指します。

カルシウム拮抗薬

カルシウム拮抗薬は数ある高血圧のお薬の中で降圧効果が高く、副作用も少ないことが特徴です。カルシウムイオンが細胞内に流れ込むと心臓や血管は収縮します。血圧が上昇する原因の一つは血管の収縮です。カルシウム拮抗薬によってカルシウムイオンの流れを抑えることにより、血管を拡げて血圧を下げます。

ARB・ACE

アンジオテンシンⅡという物質は、血管の収縮、腎臓によるナトリウムや水分の排出を抑制など、血液量が増加して血圧を上昇させる原因となります。ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)・ACE(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)は、アンジオテンシンⅡの生成を抑制することによって、血圧を下げます。

利尿薬

利尿薬を服用すると、体内の塩分と水分を排泄する腎臓の働きが促進されます。体内の水分が少なくなると、心拍出量も減少するため、血圧が下がります。さらに利尿薬には、血管を拡げる働きもあるため、効果的に血圧を下げることができます。

α遮断薬・β遮断薬

α遮断薬・β遮断薬は、血圧を上げる交感神経の働きを抑制するため、心臓から送られる血液量を抑えたり、血管を拡げたりすることによって血圧を下げます。